中華人民共和国生態環境法典(草案)について
中华人民共和国生态环境法典(草案) – 维基文库,自由的图书馆
2025年4月30日に、「中華人民共和国生態環境法典」の草案が公布され、意見募集を開始しました(意見募集は6月13日まで)。
◆これで何が変わるのか
→多くの日系法人(または中の人)にとっては大きな変化はありません。
◆では何が変わるのか
今回の生態環境法典は、中国環境保護法や中国大気汚染防止法等を全部まとめて廃止し、ひとつの法典として置き換えたものになります(なお、今回の法典以前に公布されていた規則等については継続します)。細かいところはありますが、基本的な理念で大きく変わりません。ただし、従来の法律でカバーされてなかった「グリーン低炭素発展(绿色低碳发展)」が明記されたのは新しいです。基本的な方向性は変わりませんが、「じゃあ誰が責任もってやるの」を国務院を主管部門として地方行政と役割分担しますよというのが明示されました。従来、環境法規については地方と中央でそれぞれでやや錯綜した動きがありましたが、そのへんが今後整理されていくものと期待されます。
実務レベルでは、「化学品管理に関する規制化が今後一層加速する」という点についてのみ、まずは考えておけばよいです。
例えばPFAS。現在は中国では厳格制限有毒化学品や重点環境管理対象新汚染物質として管理をしていますが、厳格制限有毒化学品は輸出入のみ、重点環境管理は新化学物質としての化学物質しか管理しません。既知の物質についての管理という観点では、中国の現行法規では網をかけにくいのです。現在および近い将来、化学物質管理は国際協調も含め既存の化学物質の管理に焦点が移っていきます。今回の法典の公布は、それに向けた国内イニシアチブの整理という役割が強いものと思われます。
◆中国の法規制についての補足
先に補足すると、中国における「法典」というのはちょっと独特で、日本でいう法律以上憲法未満みたいな位置づけです。「色々な決まりがあるけど、全部ここにまとめたよ」という性格のもので、いわば中国における法体系による統治の輪郭を示したものです。なので、中国の他の法律と同じくこの法典自体はどちらかというと行政とか、管理部門向けの文書です。事業者や個人向けの文書ではない、というのが大きなポイントです。
実務レベルでの規制の公布については今後ますます加速していくと思われますので、引き続きアンテナを張っていきたいと思います。