令和の化審法運用通知変更~不純物として含まれる一特の取り扱い

こんにちは。化学品管理子です。

2026年になりました。ということで、化審法の改正運用通知についてまとめなおしてみます。

令和7年度(2025年度)の化審法運用の改正については、以下の3段階に分けて施行されます。

  1. (令和7年10月6日施行済み)不純物であって微量に含まれる第一種特定化学物質の取り扱いについて
  2. (令和8年4月1日施行)既存化学物質についての整理
  3. (令和9年4月1日施行)既存化学物質等の定義の変更

ここでは1.の、「不純物であって微量に含まれる第一種特定化学物質の取り扱い」について解説します。

1.不純物であって微量に含まれる第一種特定化学物質の取り扱い

従来、第一種特定化学物質については「副生成物として微量に含まれる場合」に限りその量をBAT(Bst Available Technology)として管理することで製造・輸入が認められてきました。ところが、この「副生成物」というのがやや厄介で、製造者・輸入者は当該第一種特定化学物質が不純物であることを確認しなければなりませんでした。

例えば以下の例で、ヘキサクロロベンゼン(HCB)はテトラクロロ無水フタル酸(TCPA)の合成時に副生することが知られています。
TCPAからさらに反応させて得られたSolvent Red 135にもTCPA由来のHCBが微量含有されることがありますが、このHCBはSolvent Red135の不純物ですが、これはSR135の副生成物ではありません。TCPAの副生成物です。

化審法においては、この時SR135に含有されるHCBも、その前駆体であるTCPAの副生成物であるという前提でSR135の副生成物と同じようにBAT管理をしていました。でも、これはちょっと無理があったんです。

無理①『本当に副生成物であることを確認するのは、結構大変』

上記のケース、TCPAやSR135の製造・輸入者であればHCBの副生経路について特定するのはそれほど困難ではありません(特にHCBは、石油由来の化学物質を触媒存在下で直接塩素化するプロセスを経る化学物質においては副生しやすいことがわかっています)。しかし、例えばSR135を使用したコンパウンドを使用した自動車部品となると、どうでしょうか?サプライチェーンを遡って製造者を特定して、その製法まで確認するとなると実務上ほぼ不可能に近いです。

副生成物についての運用は、令和7年10月6日改正以前のものでは以下のように決められていました。

(旧運用通知)3-4 不純物として含まれる第一種特定化学物質に該当する化学物質の取扱い
第一種特定化学物質に該当する化学物質が他の化学物質に副生成物として微量含まれる場合であって、当該副生成物による環境の汚染を通じた人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがなく、その含有割合が工業技術的・経済的に可能なレベルまで低減していると認められるときは、当該副生成物は第一種特定化学物質として取り扱わないものとする。

上記の例でいうと、「第一種特定化学物質に該当する化学物質」→HCB、「他の化学物質」→TCPAです。副生成物は何かというと、運用通達では「意図した反応とは異なる反応により生成したもの」と定められていますので、例えばSR135 を使用した樹脂コンパウンドを海外から輸入しようとすると、不純物として含有されるHCBはTCPA(又は原因となる化学反応)であることを突き止めなければなりませんでした。

無理②『製造・輸入される化学物質や製品に含有される一特の理由は、管理にあまり関係ない』

ところで、「第一種特定化学物質を意図的に製造・添加しない」という趣旨はさておき、では非意図的に微量含有する一特についてその含有理由を明らかにすることは、実務上は労力の割にそれほど重要ではありません。上記の例でいうと、TCPAの含有HCBをBAT管理の中で低減させていくためにはその反応機構の把握は必須ですが、SR135の含有HCBを低減させるだけならもともとHCBの含有量が低いTCPAを原料にすればいいだけですし、SR135を使用した樹脂コンパウンドであればそもそもSR135以外の着色剤を使用するという方帆もありえます(注:SR135は透明な金赤の樹着用染料としてはほぼ唯一であり、また自動車部品[テールランプ]用の着色剤として規定を満たせるものも他にはなかなかありませんので、実際には難しいですが)。つまり、第一種特定化学物質の含有において、それが非意図的である限りその理由にはあまり意味がないのです。

今回の改正

ということで、今回の改正では運用通知3-4の「副生成物」の箇所が改めて「不純物」になりました。3-4の項目タイトルが「不純物として含まれる第一種特定化学物質に該当する化学物質の取扱い」だったので、タイトルとも整合された形になりました。

実際の運用で大きく変わるところはないと考えられますが、考え方はすっきりしましたね!

参考URL

化審法というと経産省のサイトのみを頼りにしがちですが、以下の参考URLには令和8年4月施行分と令和9年4月施行分の運用通知を見ることができます。

参考URL 化審法|厚生労働省