間違いだらけのなぜなぜ分析(後編)~正しいなぜなぜ分析~

さて、前回は間違いだらけのなぜなぜ分析(前編)として、よくない例を出しました。なぜなぜ分析、実はポイントがあるのです。
なぜなぜ分析のポイント(化学品管理子)
・原因・真因はひとつとは限らない
・なぜなぜは必ず5回とかは限らない
・解決できる事象「だけ」に目を向ける
・ひとりでやるには不向き
原因・真因はひとつとは限らない
「真因」という言葉が強すぎるのか、「真因がひとつだけある」または「真因はひとつしかない」って思っている人多いのですけど、この世界はそんなに単純じゃありませんよ…?先の例でも、なんでクリップ20箱も届いちゃったのかって、発注した内容を誰もチェックしてなかったことも原因だし、これくらいの金額だったら20箱だな、そんなにたくさん来ちゃったら困るなって発注する時に想像できなかったことも原因かもしれません。
「真因はひとつ」というのは「原因または事象に対してそれを解決すればその原因または事象が解消する」という意味でひとつだというだけです。むしろ、原因はなるべくたくさん考えましょう。
なぜなぜは必ず5回とは限らない
「なぜなぜ5回」が語呂が良すぎるのでしょうか。これも多い間違いです。真因にたどり着いたら当然にそこでやめてよいのです。業務で起こりうる事象であればどんなに複雑なものでも5回くらい掘り下げれば真因に当たるというだけです。無理に掘り下げる必要はありません。
解決できる事象「だけ」に目を向ける
原因が複数ある場合でも、そのうちのどれが本質的かという考察はなぜなぜ分析には不要ですし、すべての原因について真因を掘り下げ対策を考える必要はありません。原因が複数ある場合に、解決できない事象(例えば「私がうっかりしていた」等)についてあげつらって掘り下げる必要はありません。
ひとりでやるには不向き
今回のケースのように、自分のやったことを振り返るのはなぜなぜ分析は不向きです。自分の行動の理由…と考えると人は自分の中に理由を求めてしまいます。内面的な理由の多くは「解決できる事象」ではありませんし、またそうするべきではありません。
なぜなぜ分析は、当事者以外の人にやってもらう、できれば複数人でやってもらわないと効果が出にくい場合があります。実際の場面ではひとりでやらなければいけない場合も多々あると思いますが、その場合でもこれを思い出しながら、まるで他人事のようにやってみてくださいね。
正しいなぜなぜ分析の例
さて、ではそれを踏まえてなぜなぜ分析の例を示します。これ以外にも原因はありますし、対策も立てられるものもあると思います。

ここでは、原因はふたつ「20個のつもりで20箱発注していた」と「疑いを持たずに20箱発注してしまった」に分けました。前者の「20個のつもりで20箱発注していた」については「20箱も発注すれば大変なことになると知らなかった」「注文システムが分かりにくく、入力ミスをした」の二つを真因として挙げました。(実際には真因にたどり着くまでに2~5ステップを経ています)。後者の「指示の時点で20箱だと思い込んでいた」についても、真因の一つは「20箱も発注すれば大変なことになると知らなかった」としました。前者の真因と同じですね。「誰もチェックしなかったから誰も気が付かなった」はもう少し掘り下げて、チェックの仕組みがないことを真因にしました。
図の通り、対策も複数挙げています。なぜなぜ分析としては複数の対策オプションが導出できればまずますOKで、そのうちどれを採用するかはそれぞれの職場で話したらいいのです。今回のケースにおける対策のうち、「備品購入は特定の人以外はやらないようにする」と「注文システムの改善」は採用しないものとして外されると思います。備品注文のチェックを仕組み化することと備品購入の指示書を作成して見える化することあたりが現実的な案になるのではないでしょうか。

